インスリン以外の治療について
薬物療法は食事療法・運動療法を十分に行っていても血糖コントロールがうまくいかない場合に開始します。薬物療法で治療効果が得られるのは主にインスリンを分泌する力が残っている2型糖尿病の患者さんになります。血糖値を下げる飲み薬(経口血糖降下薬)は糖尿病の状態にあわせて調節していきます。
経口血糖降下薬は大きく分けて7種類あります。
これらの薬をいくつか組み合わせて使用することもあります。
経口血糖降下薬
ビグアナイド系
(製品名:メトホルミン、メトグルコ)
肝臓で糖をつくる働き(糖新生)を抑え、筋肉でのブドウ糖の利用を促し血糖を下げる薬です。
単剤では低血糖を起こす可能性は少なく、安全な薬です。一般的な使用量は1日500〜2250mgです。
■ 副作用
血液中の乳酸が増えすぎた状態で、嘔気や腹痛、低血圧などが起こります。ご高齢の方や腎機能低下がある方、大酒家の方は乳酸アシドーシスを起こしやすいため使用を避けます。
またビグアナイド系はヨード造影剤使用前後にも乳酸アシドーシスを避けるために休薬が必要です。CTなどで造影剤を使用する場合は必ず主治医と相談してください。
内服開始時に下痢等の消化器症状が起こりやすいです。ほとんどの患者さんは徐々に症状がなくなりますが初回は少量(1日500mg)から開始して少しずつ増量していきます。
チアゾリジン系
(製品名:アクトス、ピオグリタゾン)
筋肉や脂肪などでインスリンの効きを良くして(インスリン抵抗性改善)、血液中のブドウ糖の利用を高めて血糖値を下げます。
■ 副作用
DPP4阻害薬
(製品名:エクア、ネシーナ、ジャヌビア、グラクティブ、トラゼンタ、テネリア、マリゼブなど)
インスリンの分泌を促すホルモンであるGLP-1の働きを高めて血糖値を下げます。単剤では低血糖を起こしにくい薬です。
■ 副作用
スルフォニル尿素(SU薬)
(製品名:アマリール、グリメピリド、グリミクロン、グリクラシドなど)
すい臓のβ細胞に作用して数時間にわたりインスリン分泌を促し血糖値を下げます。
■ 副作用
速攻型インスリン分泌促進薬
(製品名:グルファスト、シュアポスト、ミチグリニドなど)
SU薬と同じようにすい臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促しますが内服して短時間だけ作用します。内服するタイミングは食事前になります。
■ 副作用
α-グルコシダーゼ阻害薬
(製品名:ボグリボース、ベイスン、セイブルなど)
小腸でのブドウ糖の分解・吸収を遅らせて食後の血糖値を下げます。
■ 副作用
SGLT2阻害薬
(製品名:ジャディアンス、スーグラ、フォシーガ、カナグル等)
尿から糖を排泄することで血糖値を下げます。体重減少効果があります。また、心疾患や糖尿病性腎症の進行を抑制する効果があります。
■ 副作用
GLP1受容体作動薬
GLP1は食事を摂取した時に小腸から分泌され、すい臓に運ばれます。GLP1がすい臓に働くとインスリンの分泌が増加し血糖値が下がります。血糖値だけではなく胃の食べ物の排出を遅らせて食欲を抑える作用があり体重減少効果があります。GLP1受容体作動薬は注射製剤と内服薬の2種類があります。
当院ではより患者様が簡単に行えるように週1回の注射製剤、内服薬を主に使用しています。
*注射製剤の場合、自宅でご自身で注射していただきますが初回は当院でスタッフ指導の下行います。
トルリシティ
(デュラグルチド)
注射回数:週1回皮下注射
トルリシティは0.75mgの1種類の規格のみです。
オゼンピック
(セマグルチド)
注射回数:週1回皮下注射
オゼンピックは0.25mg、0.50mg、1.0mgの3種類の規格があります。
状態に合わせて少しずつ増量していきます。
初回 0.25mg製剤を週1回、4週間投与後0.5mgに増量
維持量 0.5mg製剤を週1回投与
維持期を4週間以上投与しても効果不十分な場合は、1.0mg製剤を週1回投与
リベルサス
(経口セマグルチド)
内服薬(毎日内服)
起床時(空腹時)にコップ約半分(約120ml)の水で内服します。その後最低30分は飲食が禁止となります。上記注射製剤と同等の効果があります。注射による痛みがないのがメリットになります。
GLP1受容体作動薬の副作用:低血糖・食欲低下・消化器症状(嘔気・便秘・下痢・腹部膨満等)
経口血糖降下薬、GLP1受容体作動薬はインスリン治療をされている方にも併用して使用できます。
近年、GLP1受容体作動薬とインスリンの混合製剤が登場しました。
この経口血糖降下薬や混合製剤を使うことにより1日に打つ回数を減らしたり、インスリンの単位数を減らすことが可能な場合があります。